『幸せな男』  

   暗い中、赤ちゃんの泣き声。明かりがぼんやり灯る。赤ちゃんを抱いた男が出てくる。

     (泣き声を真似て)「アーン、アーン」ん、どうちたのかな?ほらほら、何を泣いてるんだぁ・・・
     オムツは替えたし、ミルクも飲ませたし・・・なにがそんなに悲ちいんでちゅか・・ねぇ、
     
     「ったく、もう!」でちゅよね、「何処行ったんだ、アイツは
!!!」「パパが怒ったらスッゴク怖いんだから」
     でちゅよねぇ・・・ちょっと言ったくらいで・・・なんであんなに・・・
     「私だけの子供じゃないのよ!」「あなたなんか休みの日だけじゃないよ!」・・
     (
淀川長治を真似て)「コワイですねぇ、まぁくんのお母ちゃまは、ホント、ヒステリックなんですねぇ、
     いやですねぇ」・・・まぁくんは、絶対、ママみたいな女と結婚ちてはダメだちゅよぉ、
     これはよぉく覚えておくんでちゅよ。パパが君に教えてあげる最初の人生訓でちゅからねぇ。
     

            赤ん坊の泣き声
 
      
      
ん、なに?あぁちょう、そんなことは、とっくに分かってたの。
     ちょう、まぁくんはお利巧ちゃんでちゅものねぇ、パパに似て・・・よちよち・・・
     
     (独り言)でも、ママと結婚したんだからパパは馬鹿か、そうだよなぁ・・・仕方なかったんでちゅよね、
     ママのお腹にまぁくんが出来ちゃったからね・・・パパは、まだ結婚なんかしたくなかったでちゅよねぇ
     ・・・まだまだしたい事が一杯あったんでちゅ・・・パパのお友達は、みんなまだ独り身で、
     青春を謳歌しているんだよね・・・(ため息をつき、そこにあるらしい鏡を見て)この歳で子持ちか
     ・・・カワイソ過ぎるよなぁ・・・・(赤ん坊の泣き声)泣かないでよ、泣きたいのはパパの方
     なんだからさ・・・

            べろべろばぁ・・・などして、赤ん坊をあやす・・・泣き止んでから

     
     ・・・パパはね、赤ちゃんなんかまだ欲しくなかったんだよ。でも、出来ちゃったからさ・・・
     堕してくれって頼んだのに・・・あいつ泣くんだもの、ずっと泣き続けるんだもの・・・
     それ見てたらさ、なんか、パパ、身体が引き裂かれるような感じになってさ・・・それで・・・
     (ボソッと)出来ちゃった結婚・・・
     
     結婚式は凄かったよ・・・ママの顔・・・こんな、お腹は・・・こんな。ウエディングドレスはなんと
     13号・・・まぁくん、気をつけるんでちゅよ。女は魔物でちゅからね。可愛いのは最初だけ、
     子供生んだ日にゃあ・・・鬼。

          赤ん坊の泣き声

      
あぁ、ごめんごめん、パパが悪かった・・・。まぁくんを要らないって言った
     わけじゃないんだよ。よちよち。泣いちゃ駄目でちゅ。パパはまぁくんが大ちゅきなんだから・・・
     ほぅら、これはどうでちゅかぁ。(と、蝶々のおもちゃを取り出し)可愛いでちゅねぇ、蝶々でちゅよぅ、
     ヒラヒラヒラ・・・ねぇ、まぁくんも大人になったら蝶々のようにお空を飛んで、
     いろんな国に行きましょうね、ヒラヒラヒラって・・・

          赤ん坊の笑い声

     ハハハ・・・ちょうでちゅか、嬉しいでちゅか、ちょうちまちょうねぇ・・・パパも嬉しいでちゅよぉ
     ・・・ヒラヒラヒラ、ヒラヒラヒラ・・・しかし、君のママは何処でヒラヒラしてるんでちょうね・・・


『蝶々とり』